これからの農業について考えていくに当たり、まず、昭和の東京の農業と都民の暮らしを振り返ります。
こちらの内容は、東京都都市農政推進協議会が企画し、農業協同組合・農業委員会の協力を得て、全国農村映画協会が制作した映画から引用しています。今から42年前、昭和54年(1979年)の撮影です。

「制作にあたって」
都市地域から農業をなくそうとする住宅政策によって、今、東京の農業はそこからしめ出されようとしています。
しかしながら、農業は都市生活にうるおいと安らぎをもたらす貴重なものとして、都市形成に欠かせないものとなっております。
私達農業者は、このことを是非多くの方々に知って頂こうとこの映画を制作いたしました。
東京の農業は多岐にわたる都民の需要にこたえ、新鮮な野菜や畜産物あるいは花などを供給し、また、観光農園・市民農園で農業に参加するなど自然にふれて頂いております。
その農地は緑やオープンスペースとしての機能もはたしているのです。
このような東京農業を知って頂こうとこの映画は農業者全員が費用を出しあって制作いたしました。
都市に生活する方々!! どうかこの映画をぜひご覧頂き、東京農業をご理解賜りますよう切にお願する次第であります。

「主な内容」
マンモス都市東京
昭和30年頃から、猛烈な勢いで人口が増加し今では日本の総人口の一割が、この東京に住んでいます。急速に増えた都民の住宅や公共施設などの建設に、沢山の土地を必要とし、そのため23区内を始め三多摩地区の農家は先祖伝来の農地を提供してきたのです。
東京砂漠とも東京ジャングルとも呼ばれている中で黙々と東京の農業を支えている人たちがたくさんいます。
その東京の農業とは
東京の農業は、都民の台所に新鮮な食料を送り緑の空間をつくり、生活にうるおいとやすらぎを与えるなど、都民の快適な暮らしと深く結びついています。東京の農地は年々減少し、現在では昭和35年の約半分(13,900ヘクタール)になり、その多くは住宅地として提供してきたのです。
都市化の波が押し寄せて来ているものの、まだまだ農業は健在で、約3万戸の農家は都区内や三多摩の各地で力強く農業にはげんでいます。
何よりも新鮮なものを食卓へ
産地がすなわち消費地ですから、都内で生産された農産物はとびきり新鮮です。野菜などは125万人分と、山形県や秋田県の全住民の消費量に匹敵する量を賄っており、それ以外にも牛乳81万人、食肉44万人、鶏卵40万人分を供給しています。
都市に緑と空間を
世界の公園緑地の広さを比べてみますと、先進諸国の中で東京はひときわ少なく1人当り2.35平方メートル、東京の全部の農地(13,900ヘクタール)を加えて、14.3平方メートル、やっとヨーロッパ並の緑地空間となります。緑のない住宅地と緑のある住宅地とでは、くらべてみるまでもありません。
郊外に越して健康になった例は、非常に多くこの事を考え合わせて都市農業を守って緑の空間を確保することの大切さがわかります。
市民農園
農家が農地を提供して、都民の皆さんから喜ばれているものに市民農園や学童農園があります。(約35,000世帯が利用)土から離れ、自然に親しむ機会を失った都市の人々が心身の健康をとりもどし、趣味と実益をかねた野菜づくりや花づくりをしています。
観光農業も都市農業のひとつの在り方です。
農家が野菜や果物を育て、収穫期に一般の人々に開放するのです。(延330,000人参加)
災害時あなたを守る
もし地震などの災害で、交通が寸断されたらそれこそ大変です。でも、私達の食料はすぐそこにあるのです。
同時にそこは避難場所にもなるのです。
それが東京農業です。
私達の東京
都民の生活を支え、緑とうるおいのある住みよい都市となるように、みんなが理解しあい力を合わせて東京の農業を守り育てていこうではありませんか。